旅立ち

正社員になって約10年。お客さんからの評判がよく、仕事もそつなくこなしてきた一人が会社を辞めたいと言い出した。手がけている仕事に対しては区切りの良いところまで終わらせてから辞めたいと言う。

ただ、会社を辞めると決めた人間は少しずつ会社に対して嫌気がさしていることもあって、仕事に気持ちが表れるようになってくるもの。

先日も、業者に委託した仕事を業者の人が納品はいつですか?と聞かれるまで放っておいたらしく苦情がきた。

辞めようと思った日、最後まで責任を持つと決めても、結果的に嫌だと思って辞める人間は、あまり長く残務を整理することは良くないのだと思っている。

予定していたよりも早く、辞めても、有給消化としてこちらも誠意を見せて、どうしても他の人には引き継げないような内容のもの以外は引き継いで終わりにするように話した。会社を辞めると決めた人間は、既に心が会社から離れている。

そうなったら、業者に指摘される前に以前とは仕事の仕上げが変わってくるものだと思ってはいたものの、日に日にやる気がなくなっていくまでの過程、辞める決心をするまでの本人の中での葛藤。

そういった目に見えないデリケートな部分も、経験している私だからこそ、もっと早く気づいて、休ませてやれたらと後悔したが、今回、改めて自覚した。

今後の仕事は決まっているのか、どういう仕事をするのかなど聞くつもりも無いが、元気で頑張れとだけ言って別れた。